俺様副社長のとろ甘な業務命令
「えー、今日から三ヶ月間ほど、この広報宣伝部で研修することになった、新任の高宮 翔(たかみやかける)副社長よ」
「高宮 翔です。しばらくお世話になります」
「開発部への研修予定だったけど、副社長の希望でうちの方で広報の仕事を一緒にしていくことになったから」
さっき私に向けていた呆れたような冷めた表情は消え、仕事の出来る男の顔になっている副社長と紹介されたその人。
まさか、うちの会社の人だったなんて未だに信じられない。
「これはセンター争い勃発の予感だわ……」
「センター争いって……」
歓迎の拍手がわく中、美香子はまたそんなことを呟く。
「斎原!」
「……え、あ、はい!」
「新商品のプロジェクト、副社長にも携わってもらうことになったから、あなたが副社長に概要を教えて差し上げて」
「わ、私がですか?」
「そうよ。何か問題でもある?」
「いえ、ないです」
「よろしい。じゃ、お願いね。じゃ、今日も一日頑張りましょう!」
何故か部長からのご指名まで受けてしまい、混乱する頭が真っ白になっていく。
何でよりによって私が……。
部長と共に奥に去っていくスーツの後ろ姿を見つめながら、深いため息をついていた。