俺様副社長のとろ甘な業務命令


「……資料はちゃんと作ったみたいだな」

「はい、ありがとうございます。あ、副社長、着きました一階」

「いや、今日は車で行く」


開いた扉を前に降りる気配のない副社長はサラリとそう答える。


「え、あ、じゃあ私は……」

「別々に行ってどうすんだ」


そんなことを言っているうちに扉は閉まり、駐車場がある地下へとエレベーターは下降していく。

押されたエレベーターのボタンを見ると、B4階が点灯していた。


このビル専用の駐車場は、B1階からB4階のフロアにある。

B1階とB2階は来訪者や業者など、外部からの車が主に駐車をするようになっていて、管理室があるB5階に近いB3階とB4階はこのビルに勤める重役やエリート階級の人たちの契約駐車場になっている。

車通勤なんて縁のない私には、駐車場に降りる機会なんて年にあっても一、二度。

仕事で業者さんと荷物を運んだりするために降りたりするくらいで、B1階かB2階に行くくらい。

思い返してみれば、その下の階の駐車場に行ったことはなかった。


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