俺様副社長のとろ甘な業務命令


B4フロアに到着すると、副社長は無言のまま先にエレベーターを降りていく。

後に続いて駐車場に出て、思わずキョロキョロと挙動不審気味に辺りを見回してしまった。


噂では聞いていたけど、駐車されている車は見事に名の知れた高級車ばかり。

国内の最高級車に、誰もが知る有名な外車。

私の見慣れたコンパクトカーや軽なんかはどこにも見当たらなかった。


副社長の車も例外ではなく、もちろんそこに違和感なく存在できる高級車だった。

車に近付きながらロックを解除すると、足早に助手席に行きドアを開けてくれる。

いきなりの紳士な行動に一瞬戸惑ったものの、文句を言われる前にそそくさと乗車した。


初めて乗る高級車は、座った瞬間のシート座り心地から別物だった。

ソファばりに居心地がいい。

車内も普通乗用車とは格が違う内装で、庶民の私には何だか落ち着かない気分だ。


助手席のドアを閉めた副社長が運転席に乗り込んでくる。

今日は黒に近い濃いグレーのスーツに、綺麗な青色のネクタイを締めている副社長。

長身でスタイルがいいから、オシャレなスーツがより様になっている。


肌、キレイ……。

そういえば、副社長って何歳なんだろう?

この感じだと、もしかして私より若かったりとかしちゃったりする?


密かにそんなことを思いながら見ていた時、不意に視線がぶつかり合う。

驚いてフリーズした私に向かって、副社長は運転席側から腕を伸ばしてきた。

目が合ったまま、接近する端正な顔に思わずギュッと目を閉じる。


えっ――……


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