俺様副社長のとろ甘な業務命令
「斎原」
「はっ、はい!」
「何でこの会社に入った」
「え?」
「志望動機」
しばらくして、突然質問を投げかけられた。
何の前置きもなく、いきなり面接のようなことを聞かれる。
「私は、ありきたりかもしれませんが……」
「……」
「好きだからです」
「それは、化粧品がか」
「いえ。女の子が可愛くなるのが……です」
語り出したらきっと喋りすぎてしまうから、簡潔にそう答えた。
もちろん、コスメが好きなのは大前提。
でも、“化粧品が好き”という一言では物足りない。
私は、女の子を可愛くしてくれるコスメという存在が大好きなのだ。
「メイクをするのって、何か、魔法をかける、みたいな……そんな感じだなって思うんです。だから私は、そんな魔法のアイテムを作り出す人になりたいなって」
「魔法のアイテム……か」
「あ、男の人にはわからない感覚かもしれませんよね」
「いや、わからなくもない」
「そうですか?」
「ああ。何となくだけどな」
そこから、話しの流れは今回の商品開発プロジェクトについてへと自然と移っていった。
昨日街頭に立ってみて、何を重視するべきか、話を聞いてみて何か新たな発見があったかなど、副社長の熱心な質問が続いた。
そうこうしているうちに開発部がある青山へはあっという間に到着。
副社長が来るというのもあってか、訪れた開発部にもいつもと違った緊張感が漂っていた。
準備しておいた資料もバッチリ役立ち、打ち合わせは順調に進められた。