俺様副社長のとろ甘な業務命令
「皆さん、今日も一日お疲れ様でした!」
その日の終業後。
ビールが入ったグラスを片手に、足立課長が音頭をとる。
『B.C. square TOKYO』七階にある、和風モダンダイニングのオシャレな居酒屋。
うちの広報宣伝部が、歓送迎会などの飲み会でよく利用しているお店だ。
外回りを終えて会社に戻ると、仕事後に副社長の歓迎会をするからと声をかけられた。
急遽今朝うちの部署にくるなんてことになったから、私たちが出かけてから慌てて段取ったらしい。
「えー、高宮副社長! 広報宣伝部へようこそ! 女性ばかりの職場で、仲間が増えて嬉しいです!」
課長がそう言うと、男性陣から歓声が上がる。
そう言った足立課長は、三十代半ばの広報宣伝部の少ない男性社員の一人。
小学生と幼稚園生の男の子、それからもうすぐ一歳になる女の子のパパだ。
イクメンで名が通っていて、一番下の子が生まれたあとは育休を取ったりもしていた。
よく私にも子どもたちの写真を見せてくれたりする。
「じゃ、堅苦しい挨拶はそこそこにして、お疲れ様でした、乾杯!」
今日の歓迎会の出席率は、急に決まったわりにはなかなか高め。
副社長の歓迎会となれば、絶対外せない用事でもない限り出席しないといけないってみんな思ったのかもしれないけど。
「そういや、今日の打ち合わせどうだったの?」
みんなが個々に盛り上がり始めた頃、となりにいた美香子が今日の開発部との打ち合わせについて聞いてきた。