俺様副社長のとろ甘な業務命令
「あー、うん。ラインナップと、カラー展開はほぼ決定かな。あと、デザインの候補がもう少ししたら上がってくる感じになってるから、あと少しってとこ。若い人たち向けだから、デザインにはこだわりたくて」
「そっかぁ、いよいよだね」
「まぁ、出来上がってきてからが仕事本番って感じだけど」
「モデル、誰起用するかもう決まったの?」
「んー、そっちは候補出しの段階。そろそろ決めてオファー出さないとなんだけど」
作る商品の内容が全て決定してからは、商品自体は開発部が試作品を作ってチェックを繰り返し、安全性の試験などを行っていく。
その後、商品の使用感などのモニタリングなどを経て、製造ラインにのり発売される商品が完成する。
ここからは広報宣伝部としてプレスリリースの準備や、CMや雑誌などとの打ち合わせで発売に向けより忙しくなってくる。
「で、開発部の反応はどうだったの?」
「え?」
「副社長のだよ、みんなどんな反応だったのかな〜って」
急にコソコソと何の話かと思えば、美香子は興味津々にそんなことを聞く。
そんなネタを振られてチラリと話題の人に視線を向けると、人当たりのいい表情で周囲の人たちと談笑していた。
「まぁ、あんなだし? 受付けの子とか釘付けになってたよ。ああ、あと、お茶出しした新人の子が派手にこぼしてた。それは副社長関係ないかもだけどね」
出てきた筑前煮みたいな煮物を自分の皿に取りながら答える。
美香子が自分の取り皿も差し出してきた。
「いや、関係大有りでしょ。見とれてこぼしたね、それ」
「かね〜? かけられた部長テンパってたし」
「うわっ、それ気まず。で? ゆずはどうだったのよ、副社長と二人で外出」
「え、別にどうもないよ。仕事の話以外してないし」
「なーんだそれ。つまんないのー。ちょっとはリサーチしてきてよ、二人っきりなんだからさ」
「何で私が。嫌だよ、言っとくけどそういう空気全くないからね。余計なことは話すなオーラ出まくりだし」
「えー、そんなことないでしょ」
「あるんだって。そんなこと言うなら美香子が自分で話しかけなよ」
「はいはい、わかりましたよー。高宮副社長!」
うっわ!
ほんとに速攻話しかけたし!
呼ばれた副社長は、今の私の感想が嘘と思われるような爽やかな微笑を浮かべて美香子に目を向ける。
横にいる私へも一瞬だけ視線をよこした。