俺様副社長のとろ甘な業務命令
「斎原、どうですか? ちゃんとお世話係できてます?」
「ちょっと、お世話係ってなに!? 指導係でしょ!」
「同じようなもんじゃん」
「全然違うから!」
私たちのやり取りを見て、副社長はフッと穏やかに笑う。
「おっ、お世話係! それいいなぁ。斎原〜、しっかり副社長のお世話しろよ」
「課長まで、やめてくださいよ!」
あまりお酒が強くない課長は、飲み会が始まると毎度開始すぐに赤い顔をしている。
今日はペースが早いのか、酔った時の饒舌さがすでにお目見えしちゃってる様子だ。
美香子や部長のせいで、おかしな空気に場が盛り上がってしまう。
場の雰囲気を和ませるためか、副社長も「お世話係、いいですね」なんて同調していた。
何よ、何なのよ!?
絶対そんなこと思ってないくせに、話合わせちゃったりしてさ!
仕事中のあのキャラはどこ行ったんだよ!
「すいません、日本酒ください。熱いので」
ちょうど席に料理を運んできた店員さんに声を掛ける。
飲んでやる。
飲まないとこの空気やってらんない。
「ちょっとゆず、日本酒なんか飲んじゃって大丈夫?」
「大丈夫。飲む」
「あんま強くないんだからほどほどにしてよね」
そこからひたすら食べて飲んで、話はそこそこに合わせながら時間をやり過ごした。