俺様副社長のとろ甘な業務命令


その言葉が火炎放だったかのように、耳が焼けるような熱にやられた。

耳だけじゃない。顔面温度も一気に急上昇。

掴んでいた手を放した副社長は、間違いなく真っ赤になっている私の顔を見てプッと吹き出す。

くらりと目眩を感じた。



嘘でしょ?!
嘘だと言って!


心の中で叫びながら、まとめて置かれていた自分のバッグとトレンチコートを掴み取る。


「まだ早いから、帰って着替えてくる時間くらいあるだろ」


そんな声を背後に聞きながら広い寝室を飛び出した。


何かから逃げるように慌ててパンプスに足を突っ込み、玄関の扉を押し開ける。

昨日の記憶がない私には、目の前に広がったその重厚な廊下も全く見覚えがなかった。

小走りする足音が、大理石だと思われる床を軽やかに鳴らす。

飛びつくようにしてエレベーターのボタンを押すと、そこで待っていたようにすぐに扉は開かれた。


ここが一体どこの建物なのか、何階なのか、それすらもわからない。

とりあえず閉じるボタンを連打して、その下にあるボタンを押す。


やっと一人になって、再びパニックのどん底に陥った。


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