俺様副社長のとろ甘な業務命令
こうやって立ち話をしていても、通りすがっていく女子たちの視線がもろ突き刺さってくるのを感じてしょうがない。
そんなこと気にもせず、颯ちゃんは美香子に目を向ける。
「志水さんも一緒なら安心だな。佑月、ちょっと抜けてるんで、よろしくお願いします」
「え、あ、私はー……」
「美香子はこれからランチに行くの。外回りは私一人で行くんだから。ていうか、抜けてるって何? 超失礼なんですけど!」
あからさまにムスッとした私に、颯ちゃんはハハハと笑う。
「ごめんごめん、冗談だよ。一人なら、気をつけて行ってこいよ。くれぐれも、知らない奴にはついてくなよ?」
「もう! やめてよね、そういう子ども扱い発言。もう二十五ですから! だいたい歳だって一個しか違わないのにさぁ」
「心配だから言ってるんだ。わかったな? じゃ、またな」
言うだけ言って、颯ちゃんは私たちの前から立ち去っていく。
うー……完敗。
幼い頃から一緒にいたから、颯ちゃんの中で私は未だに危なっかしい子どもの頃のままといった感じらしい。
いつも何かと頼って甘えてきてしまったから、いつまでたっても世話の焼ける妹って存在なんだろうけど。
「ハァ……素敵すぎる。いいよねぇ、ゆず羨ましすぎるわ」
「羨ましいって、どこが。完全子ども扱いだよ?」
「何言ってんの! 子ども扱いだろうが何だろうが、愛を感じるじゃん!」
「愛、ねぇ……」
兄妹愛、的なね……。
「心配だから言ってるんだ。とか、私も橘さんに言われたい〜!」
「はいはい、じゃあ私ももう行くからね」
「……えっ!? あ、ゆず、頑張ってね! 何かあったら連絡入れてよー!」
「りょうかーい、行ってきまーす」