俺様副社長のとろ甘な業務命令
扉が開くと、人の気配はなくフロアはしんと静まり返っていた。
数時間前に一緒に残業していた面々も、もう皆とっくに退社したようだ。
照明が落ちた薄暗いオフィスに入る。
蛍光灯のスイッチに手を乗せたところで、奥のデスクに明かりが灯っていることに気が付いた。
「あっ……」
立ったまま片手をデスクに付き、パソコンを見つめる視線がこっちを向く。
電気を点けることも忘れ、その姿に時間が一瞬止まったように固まってしまった。
「ファイルは送信し直した」
「え……」
「明日の会議の件で確認があって開発部に連絡したら、あっちの部長が騒いでると耳に挟んだからチェックしてみたら、送信エラーになってた」
カチカチとマウスをクリックする音が静かなオフィスに響く。
「あのっ、すみませんでした。私の確認ミスです」
小走りで副社長のデスクまで駆けていく。
副社長は目の前までやってきた私に画面からチラリと視線を上げると、「そうみたいだな」と呟いた。