俺様副社長のとろ甘な業務命令


メニューを見上げながら、さっきからパンケーキを選ぶよりも周囲に漂う空気が気になって落ち着かなかった。


どこの会社でも昼休みが始まっている時間帯。

カフェもそれなりに賑わいをみせている。

シアトルから日本初上陸したらしいこのカフェは人気があり、ビル内の人間はもちろん、周辺のオフィスビルからも訪れる人がかなり多い。


前に美香子から聞いた話だと、このビル内のエリートたちと知り合うために、虎視眈々とその機会を狙って通っている人たちもいるんだとか。

今まさに、そういう人たちの視線が一斉に隣にいる副社長に集まっている。

私には関係ないけど、一緒にいる手前居心地が悪いことこの上ない。


「まだ決まらないのか」

「……。はい、決めました。ミックスベリーホイップにします」

「あれ、佑月?」


やっとメニューを決めたところで、右後ろからの私を呼ぶ声。

振り向いた先に立っていたのは、昨日も会った颯ちゃんだった。


その横には、スーツが決まっているスラリとスタイルのいい女性の姿もある。

意思強そうな大きな瞳が印象的な、綺麗系の人。

艶のあるロングヘアが目を引く。

同じ事務所の人だろうか、胸元には弁護士バッチがキラリと光っていた。


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