俺様副社長のとろ甘な業務命令


「颯ちゃん、お疲れ様。よく会うね」


返事をしつつ、横の女性にも頭を下げる。

相手も特に表情は変えないものの頭を下げ返してきた。


「知り合いか?」


そのタイミングで横から副社長の声が降ってきて、妙に落ち着かない気分に襲われる。

颯ちゃんに副社長の話をした昨日の今日だ。

この鉢合わせはどこか心臓に悪い。


「あ、はい。幼馴染みです。上の階の弁護士事務所で働いてて」


幼馴染みという部分は言う必要なかったか、なんてハッとしたものの、それを聞いた副社長は余所行きで上品な微笑を浮かべていた。


「どうも。『CHiC make tokyo』の高宮です」

「橘です。佑月の会社の、副社長さんですよね? いつも佑月がお世話になってます」


颯ちゃんと副社長が言葉を交わしているのを見ながら、ふと、美香子がこの場にいたら騒ぐのだろうな、なんてことが頭に浮かぶ。

何気なく周囲に目をやると、辺りにいる女子たちの視線が痛いくらいにあちこちから向けられていた。


「いえ、とんでもない。彼女、とても出来るパートナーで、よく助けられてますよ」


歯が浮くような台詞をサラサラと並べる副社長と、やたら注目を浴びているこの立話に、居心地の悪さは最高潮に達する。


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