俺様副社長のとろ甘な業務命令
「すみません、ちょっとお話伺ってもいいですか?」
距離が近付いたところで声を掛けると、三人は話をやめて立ち止まる。
すかさず掛けてきたミニショルダーから名刺ケースを取り出した。
「私、『CHiC make tokyo』広報宣伝部の斎原と申します。今、新商品の街頭調査を行っていて、お時間あれば少しお話伺いたいなと思って声掛けさせてもらいました」
事情を話すと三人は好感触で、「え、私、使ってます!」などと言いながら名刺を受け取ってくれる。
胸の内でガッツポーズを決めて、「あ、本当ですか?」と笑顔を浮かべた。
「今度、若い女の子向けのプチプラな商品を作ることになりまして、それで、普段どんなメイクアイテムを使っているかとか、よく使う色とか、こういうのが欲しいとか、そういうのを聞かせてもらいたいなって思って」
「あー、アンケートみたいな感じですか?」
「うん、そんな感じです。五分もかからないと思うので」
「全然いいよね?」
「うん、暇してたしね」
「本当? ありがとうございます!」
快く引き受けてくれた三人を道の端に誘導して、手に持つ紙袋を地面に置く。
「今日は学校帰り?」
「あー、はい。今日、午前授業だったんで」
「あぁ、そうなんだー」
他愛ない話から始め、早速調査書を手に話を聞き始める。
話を聞いていくと、三人は高校二年生で、都内の学校に通う女子高生。
よく渋谷や原宿には訪れると話してくれた。
三人は調査に積極的に参加してくれ、今日持っているポーチの中身なんかも取り出して女子高生のメイク事情を口々に教えてくれる。
メイクについて熱心に語ってくれるその姿に、自分の若かりし頃をふと思い出していた。