間接キスを許すのは。
「……寒そうだねぇ」
はあっと息を吐き出すのと同時にこぼれた、その声。
あたしと同じように窓から3人を見下ろしていた涼華の言葉にうん、と頷く。
コートもマフラーも身につけていないどころか、ブレザーまで羽織っていない無防備な姿は見てるだけで身体が冷え切ってしまいそうだ。
そのことを口にすれば、涼華は小さく笑った。
「康一?」
「別に、康一だけってわけじゃ……」
「でもそんな薄着は康一だけだよ?」
慌てて湖太郎たちをよく見てみる。
湖太郎はちゃんとコートを羽織っているし、幹斗の首にはいつものお洒落なマフラー。
康一だけを見ていたという事実に、あたしは言葉を失った。
「あったかい格好しなよーって言ってあげたらいいのに」
そうだね。
今みたいな距離になる前だったらきっと言っていた。
なんならあたしたちを遮る目の前の窓をがらりと勢いよく開けて、ここから叫んでいただろう。
「風邪引いても知らないよー!」って。
でも、あたしはずっと、康一と話していないからできないよ。
自分の態度がおかしいとわかっているから、できないよ。