間接キスを許すのは。




そう、わかっている。

話していないのも、気まずくなっているのも、全部あたしのせい。



あたしが一方的に康一を避けているから、だからこんなふうに距離ができてしまった。

康一は気をつかってくれて、声をかけようとしてくれている。

なのに、こんなこと思うのは失礼でしかないのに。

……さみしいんだ。



課題の答えあわせをしたり、新作映画を観に行ったり、ふたりでココアを飲んだり。

前みたいに過ごしたいと思うよ。



「ねぇ、ココ。訊いてもいい?」

「なに?」

「どうして康一を避けているの?」



好きだという感情を向けられることが、冷やかされることが恥ずかしいから。

付き合うことがわからないし、考えたらことなんてなかったから。

自分ではずっと、そう思っていた。



なのに。



「……わかんない」



今になって、答えを見失う。

はっきりしていたはずの理由は、掌からさらさらとこぼれ落ちた。



自分のことなのに、……自分のことだからこそ難しい。

入り混じる気持ちのどれがあたしにとっての正解なの。



ねぇ、康一。

あたしにはもう、わかんないよ。






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