間接キスを許すのは。
*
はあっと息を吐き出す。
アスファルトから冷気が昇るような感覚に肩をすくめながら帰り道を行く。
金曜日の今日はまた、涼華たちのいないひとりきり。
誰とも言葉を交わすことなく、黙々と歩いていた。
先週、康一にうそを吐いたバチが当たったのか、担任に仕事を押しつけられてしまった。
月曜日に配布予定のプリントのホッチキスどめというなんとも面倒な作業で。
あたしは紙を1枚ずつめくるのが苦手だから、余計に時間がかかってしまったんだ。
お礼だなんて言って、くれたのは飴玉ひとつというケチっぷりだったし散々だよ。
でもまぁ、長引いたおかげと言うべきか、今日は康一と帰りに顔を突きあわすことはなかった。
時間がずれたからね、もうとっくにあいつは帰っていることだろう。
ポケットに手を突っこみ、黙々と足を運ぶ。
いつものコンビニが見えてきて、ぼんやりと眺める。
……あったかいココア、飲みたいなぁ。
あつい缶を掌で転がして、暖を取ったらよく振って。
甘い甘いココアを口にした瞬間の、ほどけるような幸福感。
どうしようもなくさみしくて仕方がないから……ぬくもりが欲しいと思う。