間接キスを許すのは。
コンビニの自動ドアへと足を向けると、開くと同時に「ありがとうございましたー」と間延びした声が聞こえる。
そしてそこに立つ人の姿に、目を見開いた。
「康一……」
呆然としつつ、彼の名前を呼ぶ。
ココアを手にしている康一の姿に心臓が1度跳ね、どうしてここに、と思わず問いかければ、「図書室に寄っていて」との答え。
普段本を読むことはあっても図書室に行くほどではないのに、なんでわざわざ行ったんだろう?
「……」
「……」
「……一緒に帰る?」
しばしの沈黙ののち、恐る恐る誘いの言葉を口にした康一。
本当なら断るはずだったのに、気がつけばこくりと頷いていた。
そしていつものように隣に並ぶ。
……ううん、いつもどおりなんかじゃない。
やけに緊張しているし、ふたりの間には少し距離がある。
会話もないまま、足だけを前に前にと出す。
まるで作業のようなそれを繰り返していると、
「くしゅっ」
くしゃみがひとつ。
思わず自分の鼻を押さえる。
うう……寒い、と肩を震わせた。
「大丈夫? そういえば、さっきコンビニでなにか買うつもりだったんじゃないの?」
「いいよ、平気」
「そっか……」
本当はココアを買うつもりだったけど、別にいい。
康一を付き合わせるのも、ひとりで戻るのも気まずいし。
だからといって、こんな困ったような表情をさせたいわけじゃなかったんだけどな。