間接キスを許すのは。
*
1年生の時から同じクラスだったあたしたちは、自然と仲よくなって同じグループに属していた。
その頃は、康一だけが特別なんかじゃなかった。
あたしはみんな等しく友だちだと思っていたんだけど……。
夏のある日、あたしはひとり自販機に飲みものを買いに行った。
紙パックのものだけを扱っているもので、持ち運びに便利なペットボトルのものがないからみんなあまり利用しない、そんな自販機。
かたんと音を立てて落ちたものを手にすると、偶然遭遇した康一の声が背中から聞こえ、あたしは肩を跳ねあげた。
手の中のそれは、みんなに嫌いだと散々言っていたココアだったんだ。
「嫌いなんじゃなかったのか?」
なんとかごまかせないかと冷や汗を流しつつ頭をひねるも、いい考えは浮かばない。
仕方がなくあたしは本当のことを告げることにした。
実はココアが好きなんだということを。
「だって共食いとか言われたら恥ずかしいじゃん……」
「だからうそ吐いてたんだ?」
「うん」
こっくりと頷いてみせる。
これは大事なことだ。
今までどれだけあたしがココアを口にするたび言われてきたことか。
むかつくだけじゃなくて、あれはけっこう恥ずかしいんだから。