間接キスを許すのは。
むぅ、と唇を噛み締めるようにしながらぽかんとしている康一を睨みつける。
文句あんのか。
羞恥心からあたしは今気が立っているんだからね。
「っはは! ばっかだなぁ!」
おなかを抱えた康一は目の前で爆笑している。
その様子はいっそ小気味いいほどだ。
「別にそんなの気にしなくていいと思うよ」
「でも……」
気になるものは気になるんだよ。
これはもうどうしようもない。
「わかった、みんなには言わないでおくよ。
だから安心して、とりあえず今はそれ飲んだら?」
そう言って彼はあたしのココアを指差した。
心からの親切心と、さっぱりと明るい物言いに背を押される。
自然と肩の力が抜ける。
「ありがとう」
笑って見せれば、康一は嬉しそうに大きく頷いた。
*
そうして、時々ココアを飲んでいる時に遭遇してくすりと笑いあったりしているうちに、他の誰よりも康一は気の置けない存在になった。
ふたりで遊びに行ったことだってある。
なんでも話せて、一緒にいると安心できる。
大切な友だち。
なのにこんなの、おかしいよ。
あたしは……好きだなんて、そんな感情は求めていなかったんだよ。