間接キスを許すのは。
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昼休み、お弁当を食べ終えて、あたしと涼華は教室に戻ろうと廊下を歩いていた。
以前はもちろん康一たちと5人で食べていたんだけど、あたしが康一と気まずくなって以来、男女で別になっている。
涼華はあたしに付き合ってくれていて、湖太郎たちは珍しく空気を読んでなにも突っこんでこない。
ありがたくて、とても申し訳ない状況なんだ。
今日も空き教室でふたりお昼を済ませて、昼休みが終わる前にと廊下を進んでいた。
その時、窓から見慣れた姿を見かけ、思わず足をとめた。
それは、湖太郎、幹斗、そして……康一。
12月も半ばとすっかり寒くなってきたのに、中庭にいる。
方向からしておそらく自販機かなぁとぼんやり考えた。
気づかれない距離だということに安心して、康一をまじまじと見つめる。
こんなふうに視界に入れることは、本当に久しぶり。
そして改めて見たことで、少し今までとは違って見える。
目立たない黒い短髪、幼い印象を与える丸い瞳。
顔が平凡なら、制服の着こなしも平凡。
それなのにどうしてか、あたしの知っていた康一とは違う気がする。
湖太郎とは違う。
幹斗とも違う。
他の誰とも違う、唯一の存在である康一のことをようやく意識する。