私の彼氏は超肉食系
「監督『一条ゆり』の誕生というのは如何でしょう? この映画の助監督さんも監督経験者だと聞きました。彼の補助があれば簡単ですよね。あんな暴力監督ができたことを『一条ゆり』が出来ないと仰るつもりでしょうか?」

目の前で『一条ゆり』がため息をつく。

今の彼女はプロデューサーだろうか女優だろうか。

まさか裕也の母親ではあるまい。

「仕方が無いわね。」

ようやく諦めてくれたと思ったのだが、目の前に出てきたのは契約書だ。

私と所属事務所との契約書である。

そこには『契約に違反する行為があった場合、最大で5000万円を上限とする賠償を請求する。』とあった。

・・・まさか・・・。

「今回、貴女の行為で映画自体がポシャった場合、私はプロデューサーとして貴女の所属事務所に対して、損害賠償を請求することができるわ。この映画を撮るのに既に多額のお金が投入されているのは分かるわよね。」

「ちょっと待ってください。貴女は私と刺し違える気ですか? 私の手には貴女が書いた誓約書があるのですよ。」

「それくらい私の初プロデュース作品は大事なのよ。分かってお願い。私は貴女で撮りたいの。」

次にため息をつく番なのは私のほうだった。

あの誓約書が切り札にならないなんてことがあっていいのか。

いや初めから切り札として使う気などさらさら無かったのだけど・・・見破られていたのだろうか。

そうであれば、もうお手上げだ。

「分かりました。この映画だけですよ。」
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