私の彼氏は超肉食系
ここは帝都ホテルの喫茶ルーム。

色とりどりのケーキが並べられ、幾らするか聞きたくもない高級そうな陶器のポットに淹れられた紅茶が置かれている。

目の前にはビシッとスーツを着込んだビジネスマンが座っている。

「お嬢さん。認天堂医大入学おめでとうございます。これはお父様からのお祝いの品です。」

「伸吾さんが選んだの?」

「ええまあ。」

「それならば、受け取るわ。」

伸吾さんが選んだものならばTPOを考えてくれるから嬉しい。

「やはり、お父様の援助は受けられませんか?」

私に嫌われていると自覚しているあの男は、代理人として事あるごとに伸吾さんをたてて申し入れてくる。

あの男はアメリカで成功すると、それまで献身し続けた母をいともあっさりと捨てたのである。

彼を応援する私に重なる女性とは母のことである。

そして私が裕也に対してあそこまで寛容になれるのも、あの男がアメリカで成功した途端、それまでの良き夫良き父親の仮面を脱ぎ捨て、私たち母子を不幸のどん底に貶めたからである。

あの男に比べれば裕也のしてきたことなど、子供のおママゴトに過ぎない。
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