私の彼氏は超肉食系
「お怪我が少なくてなによりでした。」

カオリお姉さまがくれた冷却剤で顔の腫れはほとんどひいているが少し赤くなっているのだろうか。

それとも機動捜査隊から報告が上がってきているのか。

「警察官の方々が迅速に動いてくださったからです。本当にありがとうございました。」

まだ若干引き攣っている顔で微笑みかけた。

「わしは貴女の大ファンでして、是非とも色紙にサインを貰えんかな。」

話には聞いたことがある。

国家公務員のキャリアとして位を上り詰めるとその地位を利用して、会った有名人からサインをねだる人間が良く居るという。

しかし、私みたいなポッと出の新人女優のサインまで欲しいものなのだろうか。

これはきっと社交辞令だよね。

誰からも貰っていれば、警視庁に有名人が現われたら誰かしら報告してくれる人間が居るのだろう。

「ええ。構いませんわ。」

私が了解の返事を出すとおずおずと色紙と名前ペンが出てくる。

「実はネットで映画評論家のようなことをしておって、ペンネームがカタカナで『トシゾウ』というんじゃよ。だから、宛名は『トシゾウ』でお願いする。」

映画評論家の『トシゾウ』って有名人じゃ・・・。

彼の歯に衣を着せぬ評論は有名よね。

しかも太鼓持ち記事が全く無く、映画会社に関係無くある意味平等な評論記事なのである。
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