私の彼氏は超肉食系
「何よ。もうこの役を貰ったつもりなの。笑わせないで。いいわテイク10までに彼女が間違えずに言えたなら、この役を降ります。その代わりテイク20を越えるようならば、彼女を降ろしてください。」

それはいい案だわ。

さっさと間違えてこの映画からオサラバしてしまえばいいのよね。

「わかった。彼女がテイク10を越えるようならば、セリフの長さを脚本家と考えなおそうじゃないか。『西九条』くん、私の名誉のためにやってくれんか。」

ちょ。ちょっと待った!

その方針は誰に何を言われても曲げないのが監督の信条なんでしょう?

それじゃあ、ワザと間違えられないじゃない。

「そうよ。あれだけ馬鹿にされた私の名誉のためにもやってちょうだい。」

絶妙なタイミングで『マキ』さんが口を挟んでくる。

そうだった。

彼女の名誉のためにも間違えられないのか。

なんてこった。

「だから時間が・・・。」

「『西九条』くん。時間は大丈夫だ。撮影期間は幾らでも延ばせる。スポンサーからも納得のいくものを作ってほしいと言われておるからな。」

そして、最後の逃げ道まで塞がれてしまった。
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