私の彼氏は超肉食系
「これは伏せて頂きたいのですが、親王殿下のご体調が思わなしくないのでヘリを呼んであります。直に別荘横のテニスコートに到着する予定です。」

良かった。

帰られるようだ。

それなら心配することはないね。

そのときだった。

外でドーンという大きな音がした。

とうとう雷が鳴りだしたらしい。

この台風の中、ヘリコプターを操縦する人も大変だ。

「大変です。ヘリが・・・ヘリが・・・。」

スタッフがまたもや駆け込んできて、呼吸を整えるのも惜しいのか喋ろうとするが上手く言葉が出ないようだ。

「ヘリコプターが到着したのか?」

「違います。ヘリコプターが雑木林に引っかかり不時着しました。」

「乗員は大丈夫なんですか?」

思わず私は口を挟んでしまう。

この過疎の村には医者が居ないのである。

もし大怪我を負っていたとしても誰も助けられない。

ここで私が治療行為をしてしまうと医師法違反になり、国家試験の受験資格を失ってしまう。

精々出来るのは応急処置くらいである。

「はい。擦り傷だけで乗員は無事です。」

「良かった。」
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