私の彼氏は超肉食系
「そのセリフ傷つくなぁ。僕にも中学生の娘が居てね。偶に『お父さん汚い』とか言われてヘコむんだよね。」

「すみません。」

「いいよ。いいよ。汚い格好でうろついている僕が悪いんだもん。」

「へえ、どんな格好なんですか?」

「お気に入りのスウェットでね。昔の嫁がプレゼントしてくれたものなんだ。」

この噺家さんは、もう既に離婚したが女優の奥さんを貰っている。

その離婚原因は不明だが、まことしなやかにこの男の浮気だと言われている。

だけどその子供が彼に引き取られているところをみると本当の理由は違うのかもしれない。

「思い出の品なんですね。」

「そうなんだよ。それを娘がこの間、捨てようとしてね。ケンカになっちゃった。」

「思い出の品は大切に仕舞っておいて、娘さんに同じ商品を買って貰ったらどうですか? これは想像ですけど、娘さんはそのスウェットに嫉妬されていると思うんですよ。」

「そうかなぁ。そうだったら、いいなぁ。」

「お菓子屋さんのお嬢さん見てますか? お父さんはスウェットが欲しいそうですよ。貴女のお金で買うとどちらも幸せになれますよー。」

私はテレビカメラに向かって上品かつ満面の笑みを浮かべて手を振る。

「ありがとう。僕の気持ちを代弁してくれて!」

司会者の彼は、愛想笑いじゃない本当の笑顔を見せてくれる。

< 47 / 307 >

この作品をシェア

pagetop