私の彼氏は超肉食系
「あっ。しまった。コイバナコイバナ、君の恋バナ。流石に医者の卵だ、どんどん乗せられて喋ってしまった。それでその男の子とは、どうなったの?」

「淡い恋心で終わりましたよ。」

子供の頃のことだから細かい感情は忘れてしまったけど、心温まる想いだったのは確かである。

「えっ。キスもしなかったの?」

「もちろんですよ。奥手な女の子だったんです。」

あの頃は純情だった。

裕也との割り切った付き合いなんて考えられなかった。

「だったんだ。ということは、キスは経験済み?」

「もちろんですよ。」

いまどき20歳にもなって未経験なのを探すほうが大変。

「問題発言でました! 大丈夫ですか、後ろで君のプロデューサーが睨んでますよ。」

「えっ。」

私が振り向くよりも先にカメラが『一条ゆり』を捉える。

一瞬の険しい顔の後、すぐに清純派女優の顔に戻る。


私が振り向いたときには相変わらずの笑顔だったが目は笑っていない。

マジで怒っているようだ。

「君のプロデューサー『一条ゆり』さんは、キスもまだな女の子で売り出したのですよ。そうですよね。」

最後の言葉は、プロデューサーに向けられたみたい。

「ええ、あのときの私は初恋もまだだったの。キスなんて、映画の中が初めてだったのよ。軽く触れるようなキスシーンでいつまでも私の心に残り続けているわ。」

この回答はお決まりの文句であったようで、司会者の彼は一瞬呆れた顔をした。

テレビカメラが向けられるとすぐに戻ったが・・・プロだ。

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