私の彼氏は超肉食系
「私は第3者として見守る必要があったので何も要求をしませんが、貴女はある程度の慰謝料を求めることもできたはずですが、よかったのですか?」

「ええ、彼の母親が私にとって一番いい選択をしてくれていると信じています。ただ、今回のような問題が発生しないように事前に教えて頂けると助かります。」

「ええ。もちろんよ。どんな細かいことでも事前に相談するし、事務所の社長にもそう言っておくわ。本当にそれだけでいいのね。」

本当は多額の慰謝料を要求して全てを無かったことにすることも考えたが、既に私のプロデュースの話は動き出している。

今更、取りやめたら何かと問題視されるだろう。

さらに彼女のコネを利用できなくなってしまうのが痛い。

プロデュース内容が古臭いと思っているので口を出してもいいだろう。

彼女のプライドを保ちつつ、適度に要求していけばいいのだ。

そんなに難しいことでは無いに違いない。

「はい。これからもよろしくお願いします。」

そう頭を下げる。

こういったことで彼女のプライドが保つならば何度でも頭を下げられる。

「うん。任せておいて、でも分からないことがあれば何でも聞いてね。」

あまりにも無条件に許してしまったことを不安に思ったらしい。

そう付け加える。

今の距離感はそんな感じなのだろう。

おいおい、近づけていけばいい。

「裕也君のことは私に任せて頂けますか? 志保さんからも既に状況をお聞きしているので、悪いようにはならないと思いますよ。おそらく完全に欲望を押さえつけられるようになると思います。」

相変わらず、遠藤先生は断定しなかったが欲望を抑える注射を処方し続けるようだ。

「はい。よろしくお願い申し上げます。」

これで裕也は遠藤先生の実験台となることになったようだ。

あの分野は需要がある割りに外国のほうが技術が広まっており、国内で最終段階まで治療できる病院はまだまだ少ない。

裕也がこの病院の一例目となるのかもしれない。

『一条ゆり』が後悔することになるとしても、何年も先のことになるだろう。
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