私の彼氏は超肉食系
「ゴメンね。騙しちゃったよね。本当にごめんなさい。」

このことが気がかりで訪れてきたらしい。

芸能事務所の社長の言葉を丸々鵜呑みにしてしまうなんて、私がバカなのよ。

「本当ですよー。何が5日間ですか! それも7月までに全て身に付けろですって!」

突然決まったバラエティー番組でさえ、たっぷりとエステを受け、目の飛び出るような値段の服。

そこで気付くのが普通だろう・・・なんて私はバカだったのだろう。

「ひー。ごめんなさい・・ごめんなさい・ごめんなさい。」

裕也の母親・・・いやプロデューサー『一条ゆり』が頭を机に擦りつけている。

フフフ。

アハハハ。

これくらいなら仕方が無いか。

弱みにつけこんで相手を貶めるようなことは趣味じゃない。

「言ってみただけですよ。これ以上は入りませんからね。」

「それが・・・そのう・・・。」

物凄く言いにくそうに目線だけを合わせてくる。

「まさか!」

「そのまさかなのよ。噺家の『お菓子屋十万石』さんの引きで、バラエティーのレギュラーが1本。」

あっちゃー。

それって、自分のせいじゃん。

彼の番組で泥を被ったから気の毒に思ったのかもしれない。

「マジですか? もう無いですよね。」

「それが月9の単発の1時間ドラマが1本入っちゃったのよ。」

「何故?」

「あの番組を見たプロデューサーが女医の役をねじ込んでこられて。つい。」

「受けちゃったんですか? 何の相談も無く。」

これは早々と『一条ゆり』を破滅させたほうがいいかもしれない。
< 62 / 307 >

この作品をシェア

pagetop