私の彼氏は超肉食系
「やっぱり、和重さんはイチユリストなんですね。『一条ゆり』さんの何処がいいんですか?」

彼女のファンクラブの会長である南天医大の学長にも彼が好きだと言った映画の同じシーンを彼女ソックリの笑顔で演じてみたところ、同じように真っ赤になって硬直してしまった。



「彼女を悪く言うなよ。」

「別に悪く言ってませんよ。確かに女優としての才能は凄いのでしょうね。」

「お前の話の節々からそう聞こえるんだ。まあ、裕也と強引に別れさせられたお前の立場から言えば仕方が無いのかもしれないが。」

「結果から見れば恨むどころか感謝してますよ。女優業は余分でしたが。」

「なんでそこまで、この職業を嫌がるかな。」

「それは・・・父が俳優だからですね。」

どうしてもあの男のことを喋ろうとすると口が歪んでしまう。

「・・・・・成功した途端、お前の母親を捨てたという?」

和重さんには多少身の上話もしている。

愚痴が主だったりするけど。

「そうです。あの男が母に別れを切り出す瞬間まで私は幸せな家庭で育っていると思っていたんですよ。でも、それは全て演技だった。あの男の演技だったんです。この喪失感がわかりますか!!」

私の言葉を噛み砕いてようやく理解できたのか。目を閉じて、声を絞り出す。

「・・・・・・・・・・それは、想像がつかないな。」

周囲の空気が重苦しくなってくる。

「・・・血か・・・血がなせる業なのか。さっきのセリフを聞いただけでも、お前には女優としての才能があると思うぞ。」

あんなの才能じゃないただのコピーだ。

映画を見て寸分違いない表情を作り出し『一条ゆり』本人から、その時に何を思ったか何を考えたかを聞き出して想像して作り上げた。

単なるコピーなのに。
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