私の彼氏は超肉食系
「ごめん。ごめん。そういえば、君の意思を確かめてくれって。事務所の社長に変わるから、答えてあげてくれるかな。」

私は、彼からスマートフォンを受け取る。

やはり、芸能事務所の社長は興奮していて、私の意志も『一条ゆり』の意思も関係なく押し通そうとしてきた。

その上、目の前では『お菓子屋十万石』さんが今か今かと笑顔で待ち構えているのである。

これで拒否できる人間が居たら、お目にかかりたい。

YES以外に答えは残されていなかったのである。

「よろしくお願い致します。」

芸能事務所の社長が言うには『お菓子屋十万石』さんが発起人とする公式ファンクラブを設置してもらったタレントは彼の冠番組でレギュラーを与えられるだけでなく、彼を尊敬する噺家、お笑い芸人などの冠番組からお呼びが掛かるらしい。

このことだけで10年はタレント活動が続けられるだけの仕事が約束されるということだった。

確かに興奮する理由は分かる。

分かるのだが、女優活動はさっさと終わらせるにしても、細々とでもタレント活動6年間医大に通いながら、臨床研修医として昼も夜も無い生活を送り続けることになったということである。

しかも、相手は善意でしてくれているので嫌な顔もできない。

彼が好きだというシーンの笑顔を貼り付けつつ頭を下げるしかない。

なんでこうなったのだろう。
< 75 / 307 >

この作品をシェア

pagetop