私の彼氏は超肉食系
「そこの貴女、なんですか! その格好は。」

あちゃー。

そういえば、この講義の先生って初老の女性だった。

こういう人って礼儀を重んじたりするんだよね。

これは単位落したかなぁ。

「申し訳ありません。僕の趣味で選んでしまいました。先生のようなシックな服のほうが素敵ですね。今度はそういう洋服を着せてみますね。」

『お菓子屋』さんが見学したいというので連れてきた。

『お菓子屋』さんって年上受けが良かったりするんだよね。

先生も真っ赤になって、ボーっと『お菓子屋』さんの顔を見ている。

「『十万石』って年増好きね。まあいいわ、先生『十万石』を少しだけ貸してあげるから、単位のほうよろしくね。」

先生は聞いているのか聞いてないのかよくわからないが頷いているところをみると大丈夫だろう。

交際中ということなので『十万石』って呼ぶように変えている。

ここは公共の場だし周囲の目もあるから、ビッチ女優の演技も外せない。

まあ、『お菓子屋』さんが居るときだけだが。

今日の課外授業は認天堂医大付属病院の救急外来である。

どんどんと患者が運び込まれてくる。

無茶苦茶忙しい部署なのは知っていたが、知識と現場では乖離がある。

私たち見学者も見学だけというわけにいかない。

医大生とはいえ医師免許を持っていない人間が、医療行為をすることはご法度である。

そのため、発作症状をおこした患者の足を押さえつけたりするだけなのだが罵声が飛び交う。

「そこのイケイケの厚化粧! ここに来てこの包丁を抜け! タイミングを外すなよ。」
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