魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜
会ったばかりの人に、こんな……状態で何が何だか分からなくて、信じられないというように眉根が寄る。
逃げ出したいのに、足は竦んで動けない。
そもそも、この時点で私の足を拘束している人の前でそんな行動に移しても、無意味というもので。
扉の遥か手前で捕まるか、鎖に足を引っ掛けられるか、今まさに扉には鍵がかかっている状態かの3パターンが想定される。
取り乱しはしたものの、いくらか冷えてきた頭は冷静だった。
もちろん、混乱こそまだしているものの、すぐに逃げられるわけがないということだけは確かな事実。
ならば、今取れるとされる最善の策はこの場において、ただ一つ——
「私はここにいればいいんですか?」
時間をかけて機会を探るしか方法はない。
潔く応じた私の意図に気付いたかは、表情が崩れないから分からないけれど。