魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜



会ったばかりの人に、こんな……状態で何が何だか分からなくて、信じられないというように眉根が寄る。



逃げ出したいのに、足は竦んで動けない。


そもそも、この時点で私の足を拘束している人の前でそんな行動に移しても、無意味というもので。


扉の遥か手前で捕まるか、鎖に足を引っ掛けられるか、今まさに扉には鍵がかかっている状態かの3パターンが想定される。



取り乱しはしたものの、いくらか冷えてきた頭は冷静だった。


もちろん、混乱こそまだしているものの、すぐに逃げられるわけがないということだけは確かな事実。


ならば、今取れるとされる最善の策はこの場において、ただ一つ——




「私はここにいればいいんですか?」



時間をかけて機会を探るしか方法はない。


潔く応じた私の意図に気付いたかは、表情が崩れないから分からないけれど。


< 11 / 326 >

この作品をシェア

pagetop