魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜



家にいる間も何を言っていたかなど、知っていましたよ。


それが原因なら、仕方ないと割り切れるとでも思いましたか?



ああ、私はちゃんと知っている。



今回の件で私につきっきりな理由は、その罪滅ぼしなどという哀れで惨めな役回りの尻拭いというわけではなく。


姉弟揃って狂人などという事実を見過ごすため、程度の低そうな、かつ回復の見込みがありそうな私に乗り換えたのだろう。


なんて簡単な問題でしょう。


簡単すぎて、愚直すぎて、反吐が出そう。


不愉快極まりない、といえばそういうことに違いない。



彼らは喜んでいるのだ。


あれだけ死にたがりだった私が、自殺未遂どころか暴れることさえしないことに。


理解されようなど思ってもいない。


私が大人しくしている理由は、アサヒのため以外の何物でもないというのに。



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