魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜
「チッ……いくぞ」
リーダー格らしき人の言葉で彼らは去っていった。
すごい、と素直に思ってしまった。
腕を掴まれて周りを囲まれた、半拘束状態だった私にはできないことだったけれど、彼は容易にやってのけた。
「大丈夫かお嬢さん。
こんな時間にうろつくもんじゃねえよ」
随分と背の高い彼に顔を覗き込まれて、背をしゃんと正す。
「あ、はい。すみません。
見ず知らずの私に手を貸してくださり、ありがとうございました」
そう言って頭を下げると、目の前の男性は眼を細める。
そして、驚くことを言った。
「素直なとこはアサヒの野郎にそっくりだな。
そういうの、俺は嫌いじゃない。まあ尤も、あいつみたいに礼儀知らずではないらしいがな」
確かに聞こえた、“アサヒ”という単語に思考が停止する。