魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜
記憶が戻っているか否かは、窺えば分かる。
アサヒほど鋭ければ、極微細な仕草も態度も絶対に見逃さないだろう。
だから用心も兼ねて、問いかけては観察していた。
言ってしまえば、結局私の答えはなんでも良かったのだ。
表れるのは外面に。
それをアサヒは確かめていただけなのだから。
「出たいよ。アサヒと一緒に」
笑顔さえ浮かべて見返すこと数秒。
アサヒは、はあ、と長いため息を吐くと、自身の額に手を当てて私から顔を逸らした。
「いつから戻っていたの?」
「それほどでもないの。言ってしまえば、シロウさんに話を聞いてからだと思う」
「……シロウ?」
「あれ、知らない?」
きょとん、となんとも可愛らしく聞き返すアサヒに首を傾げて、逆に問う。
アサヒは違う違う、と首を振った。