魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜
わ、わざとだ……。
その表情も、煽り立てるような問いかけも。
私の反応を見て楽しむための。
冗談には冗談で返した方がいいことは分かっているけど。
それでも……
少しだけ、本気にしてはダメですか?
「……いいよ」
「え?」
「逃避行、しよう?
アサヒが一緒ならどこにでも行けるよ」
今度はアサヒが狼狽える番だった。
何故か頰を赤らめて、顔の下半分を手で隠してしまう。
どうしたの、と問いかけようとすると、もう片方の手で制された。
「ちょっと……今は少し放っておいて」
「……?うん」
言われた通りに、声をかけることをやめた。
そればかりか、見つめることも禁止。
アサヒから距離も取られて何なんだろうと思ってしまった。