魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜





* *





シロウに言われた。


「お前はこのままでいいのか」と。


何のことかさっぱり分からなかったけど、話を聞いて理解した。



彼は不安を抱いている。


けれど、それを隠して僕に、僕たちに、忠告しているのだ。


本人もはっきりとは言わないけれど、同じことをその後、アリサにも言ったんだろう。


それもとても、辛辣に。



幾らか時を置いた頃、彼女が思い悩んでいる姿が度々目に入るようになった。


僕はその様子を見ても、何もすることはなかった。


いや、違う。


正確には何もすることができなかった、だ。



いざとなると体がすくんでしまって動けない。


考えれば考えるだけ息苦しい。


もう何もかもどうでもいいとさえ思えてくる。



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