魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜



嬉しい、と口にすることも忘れて放心する。


それだけ気持ちが溢れて仕方がないのだ。


「君のことを僕は全部知っているよ」



大きく、大きくなって。


許容量を超えたそれは形になって、想いを伝える。


気持ちに後押しされるまま、アサヒに触れる。



「ん、どうしたのアリサ」


アサヒに抱きついたまま、彼の胸に顔を埋めて小さく首を振る。


「何もない」と、そう伝えるように。



くすり、と頭上から降ってくる微かな笑い声。


とても、楽しそう。



「人前では恥ずかしがるアリサもいじらしくて可愛いけれど、こういう大胆な君も悪くはないね」


戯れているわけでも、からかって言っている訳でもない。



それは彼の本心だ。


嫌な嘘を、アサヒは私には絶対につかない。


あるとするのなら、それは私を案じている時だけだ。


< 284 / 326 >

この作品をシェア

pagetop