魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜



もしも世界中から否定されて、罵られて、後ろ指を差されて。


弱い私は耐えられるのかと。



以前の私なら、確かな意思を持って頷けただろう。


「アサヒがいるなら、周りなど関係ない」と、そう言えただろう。



けれど、今はもう分からなくなってしまった。


それはきっと、狭い殻から抜け出して世界を知ってしまったからかもしれない。


残酷な人間(ヒト)で溢れた、この世界を。




『アサヒがいるから』『アサヒがいなければ』『アサヒのために』


今でも変わらない想いは確かにここにある。


けれどそれでも、耳を塞ぎたくなる衝動に駆られるのだ。



「アリサ」


はっと我にかえって、アサヒから離れる。


ああ、人の目がある場所でまたやらかしてしまった。


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