魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜



しばしの沈黙。



「………へえ、デート」


「うん、デート。……シロウさんと」


今更引っ込みもつかず、確認するアサヒに頷いて見せる。


とりあえず彼の名前を出しておけば、心配することはないだろう。


ああ、またシロウさんが犠牲に……。



対面式のキッチンだからアサヒの表情がよく分かる。


にこにこ、笑みを浮かべたまま固まっている。


水が出っ放しだけど気にも留めていない。


こ、怖い…。



その場にいるのが居た堪れなくて、私はさっさと自分の食事を片付けて部屋を出た。


……視線が、痛かった。



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