魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜
口では言うけど。そう、言うけど。
……何だか軽い。
一連の動作にうっかり騙されかけるけど、目の前の人物は結局、私が何を作ったところで「美味しい」の一言で片付けてしまうんだろう。
本当にそう思っているのかと一度聞いてみたい。
そんな心情は相手にも容易に伝わったらしい。
「本当に美味しいと思っているんだよ」
困ったように笑いながら、軽く口元を拭う。
そんな自然の動作さえ様になるのは彼が単にイイ男だからか。
それとも、納得させるための計算か。
いや、まあ……それはないということは分かっているけど。
それでも疑ってしまうのは無理もないでしょう。
その、完璧とも言える微笑を見抜くことはあっても、完全に崩れた姿を見たことがない私はどうしても信用ならないのだ。
そうこうしていると、すっかり馴染んでいる自分に気が付いた。