魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜



身じろぎするも、起きる気配はない。


まあ、起きてしまってもその笑顔が一番に向けられるのなら、僕は一向に構わない。



けれど——



他の奴に現実に戻されるくらいなら。



部屋の向こうで響く喧騒に顔をしかめる。


眉を顰め、すっと目を細める。


ああ、耳障りだ。


黙らせてこなければ。


でないとアリサが起きてしまう。


そっとアリサをベッドに横たえると、その前髪を撫で付けて、のろのろと立ち上がる。



「——…ぁ、…ひ……」


と、袖を掴んで寝言を呟くアリサ。


その手をやんわり離すと、その薄く開いた唇から小さく声が漏れて、いくらか気分が落ち着いた。



大丈夫だ。いつものように上手くやればいい。


ひくつきそうな微笑を浮かべ、面白くもない話に相槌を打ち、淑やかに対応してみせる。



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