魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜



どれだけ腕が痛もうと、指先が白く冷たくなっても。


がしゃがしゃと音を立てて一杯までずっと、ずっと引っ張る。



けど、鎖を引きちぎるなんてただ体力を消耗するだけの、決して実現できない無駄な行動に過ぎなかった。


じゃらり、鎖に込めた力がふっと緩むと同時に床に落ちて鳴る鎖。



泣きそうだ。いや、泣く。


目頭が熱くなったと感じて、そう思った直後。


頬を伝う涙。


シュウがいれば絶対に流れなかったはずの、何とも取れない、本当にただの涙。



心の底から叫びたくなくなるような衝動。


今ほど、こんなにも。



「出たい、よぉ……っ」


そう思ったことは、ない。



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