魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜
追いかける影。
追われる脆弱な生き物を嘲笑いながら、首を傾げる。
「どうして逃げるの?」
訳が分からない、と。
自身の行いが善か悪かの区別もつかずに、追い詰めていく。
「ひっ……!や、やめ…っ」
ぐしゃり。
耳障りな音が辺りに響いて、追われた少年の叫びを誘発させる。
哀れにもボロボロの顔を見せ、なおも許しを請う。
「た、ずげ……で……だ、れ…か……」
鼻は曲がり、唇は大きく切れて、最早まともな言葉を発することさえ難しい。
けれど、無情な悪魔は秀麗な顔に変わらぬ微笑を浮かべた。
「“助けて”?誰に言っているんだろうね、それは」
その顔が醜悪に歪むことなどあり得ない。
なぜなら、それらは純粋ゆえの行動なのだから。