魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜
一切を悪いとは思わない、道徳に欠ける行いに違いないというのに。
それでもやはりというべきか。
月明かりに照らされた彼は、ひどく綺麗だった。
「悪いのは君だよ。僕の大切なものを奪おうとした君が悪いんだ。
そう、君が……ね」
にこり、優しげに細められた目尻。
瞳に映るものは目の前の少年の醜い姿。
それと——
「ああ、これでもう僕たちを隔てられない」
——ただただ愛しい、彼女の幻像だった。