イジワルな彼と夢みたいな恋を?
スマホを片手に部署を飛び出した。
私の去った後も、四人の笑い声が廊下の方まで響いていた。




(…もうっ、何なのよ!)


中学生男子のイジワルってあんなもんでしょ。
特に一ノ瀬圭太のは子供みたいで、それに毎回引っ掛かってた私も相当だったけど。


プンプンしながら廊下を歩いて休憩室へ向かった。
自販機でコーヒーを買い求め、ゴクン…とひと口飲んでソファに座る。



「好きな子には無理難題を押し付ける」
「イジワル言って楽しんでる感じだった…」


ゆとりちゃん達の言葉を思い出しながら否定する。
あいつが私を好きで、イジワルをしてたとは思いにくい。


そんな素振りは見せたことがなかった。
肝試しの夜も、一緒に学級委員ができたことを喜んでただけだった。


腕を掴んでる奴の顔を見上げると照れてた。
モテる人のくせに…と思いながら、きゅんと胸が締め付けられた。


好きだと思ってたのは私だけで、あいつはきっと違う。
その証拠に初恋は実らずだったじゃないか…と、コーヒーを飲みながら思った。



「ふぅ…」


短いメロディが聞こえ、LINEを開くと。


「絵里…」


『美晴、今いい?』


何だろう。


『いいよ、休憩中だから』


本当は逃走中だけど。


メッセを送ったら、程なくして着信音が鳴った。


「どうしたの?絵里」

「ビッグニュース手に入れたよ!」


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