イジワルな彼と夢みたいな恋を?
「別に」


彼はニヤつきながらキッチンを出て行く。
その後ろ姿に舌を出したい気持ちを抑え、自分も名残惜しそうに後を追った。


入ってきたドアの横には階段があり、一ノ瀬圭太がそれを上り始めたから付いて行った。

横の壁にはフックが取り付けられてて、何にするのかと聞いたら、絵や写真を飾れるようにした…と言う。


どうやら本当に彼が設計した家のようだ。
仕事をしながら、どうやって図案を書いてたんだろうか。


疑問に思いながら二階に着くと、そこにはドアが四枚見えた。


「一番奥のドアがバルコニーに続いてて、手前が主寝室と子供部屋」


簡単に説明して「好きに見て回れば?」と放り出す。


「ま…回るわよ」


可愛くない言い方をして主寝室のドアから開けてみる。
そこにはウォークインクローゼットがあり、屋根の形のままの木の天井があった。


(素敵……いい夢が見れそう…)


置かれたベッドに寝転んで、天井を見上げてみたいなって気分に襲われる。


ちらっとドアの辺りを見ると一ノ瀬圭太の姿はない。
少しだけ…と思いながらベッドの端っこに腰掛け、背中をベッドにくっ付けた。


(気持ちいい…)


構造材の木目を見てると森の中にいるよう。
清々しい木の香りに包まれて目を閉じると、まるで森林浴をしてる気分だ。


(サイコー。このまま眠りたい…)


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