イジワルな彼と夢みたいな恋を?
ほんの少しのつもりが離れ難い良さがある。
もう少し、もう少し…と思いつつ、ついウトウトとし始める。


「ふぁ…」


大きな欠伸をしたら、少しだけ意識が遠退いてしまった。

一瞬の間の後で、ギシッとスプリングの弾む音がして目を開けてみたら、木目が迫って見えてギョッとした。



(マズっ!寝てた!?)


ガバッと起き上がると、隣から声が聞こえる。


「気持ちいいなぁ。この部屋」


見れば日焼けの薄れた肌の男が両腕を枕に寝転んでる。



「…起きなさいよ」


「お前、自分が先に寝といてそれ言うのか?」


寝たままの姿勢でこっちを振り向き笑う彼にドクンと胸が鳴る。

いけない妄想が起こりそうで、慌てて逃げようとしたら。



「待てよ!」


右手首を掴んで止められた。
余計に弾む胸の音を抑えつつ、「何よ」と平気な顔をして振り向く。


「大田も転がれよ。もう少しこのまま休もう」


呑気そうに目を閉じながら呟く。


「嫌よ。何で」

「社長命令だ」

「ええっ!?そんなの聞ける訳な…」

「いいから!」


ぐいっと二の腕を掴んで引っ張られた。

バランスを崩しながら横に倒れたから、そのまま一ノ瀬圭太の方を向いてしまう。


ドキッとする心音に苦しくなる。
一体どこまで意地が悪いんだか。


「何するのよ!」


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