イジワルな彼と夢みたいな恋を?
「お…大田さんが笑った…」

「ウソ。初めて見る〜」

「なんか……幸せそうらよー」




うん。
幸せだよ。

ハイスペックな彼と、夢に描いたような恋が始まりそうな気がしてきたから。



「さっさと出て行け。いつまでも邪魔するな」


手で追い払うなんて犬猫じゃあるまいし。



「ボーナスカットはナシですよぉ〜」

「そんなことしたら労働基準局に訴えるっすよ」

「大田さんからもよく言っといて下さいれ」


「…うん、わかった」


あんた達も主任も私も、ボーナスアップを要求しよう。



手を振って彼らを見送った。

階段を駆け下りて出て行く足音に息を吐き、一ノ瀬圭太が振り返る。



「あいつらは只者じゃないな」


ええ、ええ。大事な秘蔵っ子達ですよ。



「さっきの続きでもするか?」

「さっきの続き?」


ハイスペックな男が近づいて来る。

ビクッとしながら見上げると、イケメンオーラを満載して立ち塞がる。


「突き飛ばしてもいいから」


「しないよ。そんなこと」


そう言うと微笑まれた。

近づいてくる顔に目を細め、そっと瞼を瞑る。




「大田……美晴……」


イジワルな彼が優しく名前を呼ぶ。


夢みたいな恋の始まりに


胸が高く鳴り響いたーーー。




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